筆について

絵の具の話からだいぶ間が開きましたが、今日は筆の話など。

左から、油彩用、水彩用、アクリル用

絵の具の種類に続いて訊かれることは、「筆はどんなものを買ったらいいですか?」です。一口に筆といっても、画材屋に行けばおわかりのとおり、ものすごい種類があります。お値段もピンキリです。高い筆はやはり持ちがいいのは確かですが、最初からそんな筆は怖くて買えませんよね。

使う絵の具で筆も使い分ける

当たり前のようで、結構筆ならなんでもいいだろうと思っている方は多いです。そしていざ描こうとすると、なんとなく絵の具が乗らない、うまく描けない、なぜ!? となるわけです。キャンバスや紙の種類、下準備の影響などもありますが、まず考えられるのは筆です。

水彩用は?

水彩には一般的に水をたっぷり含みやすい柔らかく天然毛の筆が描きやすいです。洋画用ですとセーブル(テン・イタチ)の毛に代表される筆が、絵の具の含み具合も弾力も非常に具合がいいです。大きめのサイズを一本だけでも用意すると、活躍してくれると思います。
個人的には、日本画用の「彩色」という種類の筆をよく使っています。手に入れやすく、お値段も優しいので何本でも用意できますから、大小数種類用意しておくと、だいたい事足りると思います。

漫画家さんが結構多様している「面相筆」というのがあります。本来、仏像や人形の顔を描くための筆ですが、人形の顔を描くだけあって細い線の描写に向いています。ただ私は面相筆が絵柄に対して腰が弱く苦手で、「白桂」という種類の筆を面相の代わりに使っています。このあたりは個人の好みの問題なので、みなさんも色々試してみてください。

アクリル絵の具にはどんな筆?

だいたいみなさんが慣れ親しんできたのは水彩絵の具ですので、家にあったセットの筆で描こう!と、それでアクリル絵の具を描き始めたとします。あれ?なんかふにゃ〜っとしちゃうんですけど。描けないんですけど…となります。

アクリル画の場合、水を多く含ませて水彩のように描く方は例外として、アクリルの粘度を生かした力強いタッチで描きたいときなどは、水彩の筆では絵の具が思うように伸びてくれません。それに加えて、アクリル絵の具は筆を傷めやすいので、天然毛のものよりは、合成繊維のものをお勧めしています。合成繊維ですと、腰も強く、毛そのものが強いので、絵の具の粘度と紙やキャンバスの摩擦で筆の消耗を遅くすることができます。これが天然毛ですと、あっというまに毛の先が削れてしまいます。昔、猫のひげを描くのに、家にあった筆でいいや〜と、ウィンザー&ニュートンの水彩筆000号で描いたら、1匹分の猫のひげで筆がだめになりました。

油彩はどうするの?

油彩の筆は、手入れさえきちんとすれば、天然筆が使いやすく、大げさに言えば一生ものの出会いもあるかもしれません。技法によって、絵柄によって、筆の形も様々ですので、これはもうご自身で片っ端から試してみるしかないかもしれません。オールマイティなラウンド筆。幅広く塗りたいときはフラット。グレージング(薄い絵の具を塗り重ねる方法)には、扇形の筆などもあります。油彩はメーカーによってもかなり好みや差があるかと思います。このあたりは検索をかけてみると、筆の解説している方、画材マニアの方のページがたくさんひっかかりますので、「油彩筆」で調べてみてくださいね。

筆の形

油彩のところでも述べましたが、水彩用もアクリル用もそれぞれ形状の異なる筆が用意されています。
(水彩に関しては下の限りではない。)

  • ラウンド:サイズの小さいものは極細の線も引くことができる。
  • フラット:面でタッチを描写したり、エッジを利用しての線の描写も可能。
  • フィルバート:先が丸みがある感じの平たい筆。
  • ファン:おつゆ描きで薄く描写をするのに向いている。ぼかしにも向いている。
  • 刷毛:下地塗りや大画面に色をつけるときに使う。

ご自分の絵柄や絵の具の種類、描写方法でうまく使い分けてください。

絵を描き終えたらきっちり洗うこと

油彩は基本的には色の混色をさけるため、たくさんの筆を用意しておいて作業をし、その日の終わりにブラシクリーナーを使って丁寧にすべての筆を洗いましょう。

アクリル絵の具も根元に入り込んだ絵の具が固まるとやっかいですので、石けんや洗剤で根元までよく洗います。

水彩筆も筆洗に立てっぱなしなどすると、筆が変形してしまいますので、水できれいにあらってぶら下げるかひっくり返して立てるかして干しておきましょう。

筆にかぎらず、どんな道具もお手入れだけはきちんとなさってくださいね!


筆はあまりにも奥深すぎて、そこだけを追求しているようなサイトもありますので、わたしの解説はこのくらいにしておきましょう。ご自分の好きな筆が見つかることをお祈りしています。

ページトップへ