紙!その2

水彩紙のその後…もとい、その2お送りします。

いろんな形で売られています

スケッチブックというとコイル状のもので一辺を閉じたものをまずは思い浮かべることでしょう。一番なじみがあり、また様々な種類の紙で発売されています。
外で写生をするには、紙をめくるだけでいいこのタイプが便利です。
ただ、絵の具を使いますと、どうしても紙が水分を含んで波打ちます。額に入れて展覧会に出したいという目的があると、少々問題点ということになります。

ほかのタイプを使ってみよう!

水を含めば紙はどうしても波打ちます。それを避けるため『水張り』という方法で、一定の大きさにカットされた紙や漉いた状態を丸めたロール紙を購入して、木製パネルに固定させて描きます。糊で貼り付けるわけではなく、紙の裏に水を刷毛で塗り、乾かないうちに木製パネルの上にひっくり返してきっちり伸ばし、四辺を専用の紙テープで留めます。乾くと紙がピンとはり、絵の具で塗っても乾けば必ずピンとした状態に戻ってくれます。糊で貼るわけではないので、きれいに剥がすことができ、また木製パネルに別な紙を水張りして使います。大きい作品にはこの方法が一番お勧めですが、少々練習も必要です。
 
そこで水張りをすることなくお手軽に水張り状態で描けるものがあります。
 
ブロック
複数枚の水彩紙の四辺を糊づけし、一冊にしたものです。描いて乾かしたあとに、パレットナイフなどを使って描いた紙を剥がしてやります。四辺が固定されているので、乾くと水張り同様、紙の波打ちを防ぐことができます。

パッド
複数枚の水彩紙の上か左の一辺を糊づけしてあります。ブロックほどの効果はありませんが、水をたっぷり含む描き方でなければある程度防げると思います。あくまでもある程度です。

紙の目には種類がある

水彩紙はメーカーによっては『荒目(またはラフ)』『中目(またはコールドプレス)』『細目(またはホットプレス)』と三種類に分かれています。メーカーによって多少呼び名がちがいますが、大!中!細!と紙の目が違う!と覚えておけばオッケーです。
 
荒目
絵の具の顔料が溜まりやすい=絵の具がたっぷり乗るので、発色がよく、滲み技法で味わいのある描写に向いています。何せ目が荒いので繊細な描写には向きません。
 
細目
きめ細かくスルっとしているので、細密な描写を得意とする方や、精密さを要する絵にも向いています。絵の具の染みこみが早く速度を要する…と説明しているページもありますが、わたし個人の印象では逆に乾いてくれないなぁ…と思うので、これまた向き不向き好き好きの世界だと考えます。
 
中目
その名の通り荒目と細目の中間です。初めて使う紙のメーカーでしたら、特徴を捉えるため中目を選ぶのが無難です。

水彩紙の表面処理

日本画に使う和紙は、膠にミョウバンを混ぜたドーサ液というものを塗って絵の具が必要以上に染みこみにじむのを防ぎます。洋紙である水彩紙の場合は製造過程において『サイジング』という動物性ゼラチン…まぁ膠ですね…を表面に引きます。今では代替え材料を使っているメーカーもありますが、高級紙アルシュは今でもゼラチンです。
 
この表面処理で、紙の「吸い込み」「滲み」「はじき」具合が変わります。ここでまた自分の作風や筆運びにより、紙の好みが分かれてくるんですね。アルシュはこのサイジング度合いがかなり強く感じます。それでわたしはこの紙が苦手というわけです。わたしの水彩における作風はすぐ吸い込んで出来たような滲みを生かしたものなので、水分をはじいてしまうアルシュでは上手く表現できないわけです。一方、きれいなグラデーション表現の滲み具合やぼかしを表現したい人にはもってこいの紙です。乾きが遅めなので、*ウェットインウェット技法や**リフトアウト技法も得意です。
そんなわけで「滲み」ひとつとっても微妙なので、本当にしつこいようですが、ご自身で試してみるしかありません。
 
*まだ先に塗った色が乾かないうちに次の色を塗る。
**乾かないうちにティッシュなどで絵の具を取り除く、または乾いてから水を含ませた筆で描き、やはりティッシュなどで取り除く。

紙も風邪をひく?

鼻水を垂らし始めたら風邪を引いています。……嘘です。
紙は湿気に弱いです。上記のサイジングが湿気により変質。効果が薄れた状態をいいます。作品を描くにあたって、さらの紙が何年くらいもつのか正確には知りませんが、湿度の高い日本ではいい状態で保存するのは大変厳しいので、購入したらなるべく早く使いましょう。


偉そうに描きながら、何年も放置したブロックに作品を描いたわたしです。ブロックだったおかげで、劣化が多少防げたようです。みなさんはそんな真似をなさらないでくださいね!

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